ビデオゲームの墓場 -1980年代のゲーム市場-

アメリカ、ニューメキシコ州のアラゴモードに「ビデオゲームの墓場」と呼ばれる地域が存在しています。
なぜこのように呼ばれるようになったのか、その背景にはビデオゲームに関する残念な歴史があります。

家庭用ビデオゲームの普及

1970年代、現在のように家庭に据え置かれたゲーム機はまだ一般的ではなく、ゲームはゲームセンターへ赴いてそこに設置された大きな筐体でプレイするのが普通でした。

そんな中、1977年にアメリカのアタリ社によってAtari2600という家庭用ゲーム機が開発されます。
ロムカートリッジの入れ替えによりプレイするゲームを都度変えられるという、今となっては当たり前の機能ですが、それ故にAtari2600は大ヒット!

atari2600

・・・とはならなかったようです。上記で触れたようにゲームはゲームセンターで行うのが一般的であったことからAtari2600の売り上げは芳しくなく、開発者の一人は責任を追及され解任という事態にまで追い込まれています。

大ヒットゲームの移植

しかし当時ゲームセンターにて大ブームとなっていた「スペースインベーダー」をAtari2600に移植した事により大きな反響を呼びAtari2600は一躍大ヒットゲーム機となりました。
大ヒットを見越して大量生産しながらも、売れずに山のように抱えていた在庫は瞬く間になくなっていきました。

ゲームの量産と問題点

このAtari2600の大ヒットに目をつけたサードパーティ(第三者のゲーム開発業者)の参入によりAtari2600のゲームが大量に量産されることになりました。

しかしこれが問題で、サードパーティ勢は当初アタリ社により全く管理されておらず、誰でもAtari2600のゲームを作って販売することができたので、中には所謂クソゲーと呼ばれるものや酷い場合にはバグだらけでまともにプレイする事すらかなわないソフトまで販売されたようです。

そのような状況の中でAtari2600の評判はあっという間に凋落していきました。

大ヒット映画とのコラボ

E.T.

それでもサードパーティからの供給は止まらず、ヒットしたアニメや映画を元にしたゲーム性のあまりないものが氾濫する中、1982年にスティーブンスピルバーグ監督・制作の「E.T.」の大ヒットにあやかってAtari2600でも同映画を題材としたゲームが発売されました。

この「E.T.」も多分に漏れずヒットにあやかっただけの「面白くないゲーム」の一つであり、尚且つAtari2600への評価は既に失墜していたといこともあり全く売れませんでした。
更にこの時期アタリ社はAtari2600の後継機であるAtari5200を開発・販売しており販売体制をそちらに以降しようと模索している状況でもありました。

ゲーム市場の凋落

このような世間の評判や会社方針のズレの重なり、更にはホームコンピュータの登場もあり、家庭用ゲーム機への興味と信頼は完全に失われゲーム機が全く売れなくなっていきます。

1982年時点では30億ドルもあったゲーム市場はわずか3年後の1985には1億ドル程度まで底冷えし、家庭用ゲーム市場が崩壊することになります。

1980年代前半にゲーム世界に傷跡を残したこの現象は「Video game crash of 1983」、日本では「アタリショック」と呼ばれています。

ゲーム市場は任天堂のファミリーコンピューターが普及するまで低迷期を迎えます。

ゲーム市場を壊した戦犯

さて、前述のAtari2600版E.T.はアタリショックを間接的に巻き起こした戦犯とされ「テレビゲーム史上最大の商業的失敗作」という汚名をかぶることになります。

アタリ社の再起をかけて販売されたこのタイトルは結果的に大失敗。
500万本製造して売れたのは150万本。更にアメリカではゲームショップは売れなかったソフトをメーカーへ返品可能という制度が確立されていたこともありアタリ社は大赤字を抱えて経営は傾きそのまま会社分割・吸収へと繋がります。

売れ残った大量のゲームソフトはニューメキシコ州のアラゴモードの砂漠に埋められたと報じられ、アタリショックの象徴として「ビデオゲームの墓場」と言われ都市伝説化していきました。

真偽の検証

その噂は長い間都市伝説として放置されていましたが、2014年にゲームを埋めた当時の責任者立会いのもと実際に掘り起こすプロジェクトが立ち上がり、ドキュメンタリー企画として発掘作業が実行されました。

実際に「市場最低のゲーム」E.T.などを含めて数種類のゲームソフトが発掘されたようで、「ビデオゲームの墓場」は都市伝説でなく本当のことであったと証明された瞬間でした。

掘り起こされたそのゲームソフトはゲームの黒歴史を象徴するものとして博物館などに展示されているとのことです。

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