Adobe FLASHが通った道

ウェブ技術の内情は日々変わり続けています。
去年流行していたデザイン手法が今ではもうすでに古臭い手法となっていたり、トレンドと廃りのサイクルの速さはファッション業界に匹敵もしくは凌駕する勢いであると感じます。

過去に、流行りながらも既に廃れていってしまった技術にFLASH(フラッシュ)というものがあります。
画像編集ツールのPhotoshopやウェブオーサリングツールのDreamweaverなどを保有しているAdobe社が開発したツールの一つです。

ウェブ界で一世を風靡したFLASHとは

FLASHはウェブ上でアニメーションやブラウザゲーム等の動きを伴ったコンテンツを作る事ができるツールであり、(当時は)動きの少ないウェブの世界に視覚的に豪華なコンテンツを導入可能ということで大いに流行したツールでした。

実際にFLASHで作られたサイトはとても華やかで、もはや芸術作品と言える領域まで昇華されたコンテンツも多く見受けられました。「FLASH倉庫」なるFLASHのアニメーションやゲーム作品を集めたサイトが流行していたことを覚えている方もいらっしゃるのでは。

アニメやゲームを作るだけではなくブラウザ毎の挙動の癖を吸収する役割でも活躍していました。
Youtubeやニコニコ動画などの動画プレイヤー等は過去においてFLASHで作られていました。
ともかく、ウェブを覗いてみればいたるところにFLASHが散見されるという時代があったのです。

FLASHの陰りが見え始めた時期

しかしある時期を境にFLASHは失速し始めます。
理由は多々あるでしょうが、

[技術者視点で見ると]

  • FLASHを作成する為に専用のツールが必要、しかも安くはない
  • FLASHで凝ったコンテンツを作るにはFLASH専用の知識(ActionScriptというプログラミング)習得が必須、しかも他になかなか活かせない

[ユーザー目線で見ると]

  • FLASHを観覧する為に専用のシステムをインストールしなければならない
  • 単純に重い、いつまでたってもロードが完了せずコンテンツを見られない
  • セキュリティ及びプライバシー上多くの脆弱性を含んでいた

など、今後FLASHが永久に生き残っていくには多すぎる「脆さ」を抱えていました。

とうとうあの企業に見捨てられちゃいました…

特にAppleがFLASHを見捨てた事は大きな転機であったように思えます。

Apple元CEOのスティーブ・ジョブズ氏は初期iPhoneが登場した時点からFLASHには対応しないと明言しており、実際にiPhoneではFLASHで作られたウェブコンテンツを見る事が出来ない事態が発生していました。

スティーブ・ジョブズ氏のFALSH拒否の意向は「技術的な問題がある」「自社コンテンツのゲームで遊んでもらう為に対抗馬のFLASHを使用不可とした」「もともとAdobeが嫌いだった」といった憶測めいた根拠もあるものの、実際に正式にFLASHに対応する事は拒絶されてきました。

当時はまだiPhoneでのウェブブラウジングは現在程のシェアが無かった為にごく一部のみの問題で済まされていました。
しかし昨今のようなiPhoneユーザーが大多数の現状でFLASHではコンテンツが見られないという状況では、サイトに訪れた多くのお客さんを逃してしまいビジネスチャンスをみすみす捨てているだけの自己満足のコンテンツとなってしまっており、結果としてFLASHを用いてサイトを構成しようという技術者がみるみる内に減少。

かつてはFLASHを使用していたYoutube等も現在はFLASHを切り捨てて別の技術を代替しており、益々FLASHのシェアが減少していく流れが加速していったように思えます。

もはやFLASHは必要無い?

ウェブの表面上を構築する時にかかせないものにhtmlやcssなど構造を制御する言語、更にはjavascriptといったプログラミング言語がありますが、それらは日々進化しておりかつてはFLASHでしか表現できなかった動的コンテンツの作成がウェブを作る上では習得必須であるその技術を用いて作成可能であることも大きな要因でしょう。

技術的視点で挙げた問題にもあるように、FLASHを会得するにも多大な労力を要するにも関わらず、出来上がった成果物を披露する機会が減っている状況では全盛期のような盛り上がりを見せる事はかなり難しいのではないでしょうか。

次々に出てくる技術と捨てられる技術

このように、一時代を築いた技術もあっさりと見限られてしまうのがウェブ技術の世界です。
ユーザーからは同じように見えるページも昔と今では作り方や使われている技術は別物である場合が多くあります。

いかに新しい技術を見つけ自分のものとするか。
早いサイクルでの変化への対応が求められる世界です。

しかし変化が激しい故にいつも新しい発見があり、学習意欲さえ持ち続けられれば必ず楽しめます。

プログラミングも然り。
一朝一夕で身につけるのは難しいかもしれませんが、そこさえ超えてしまえば目の前が大きく広がります。
皆で楽しく学習してみましょうよ!

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