英語学習って早ければ早いほど良いの?
子どもに英語を習わせたいと思う親御様は多くいることでしょう。どうせ習わせるなら早いほうが良いと考え、幼稚園の時期から英語教室に通わせる例もよく聴きます。
そこで今回は、早い時期から英語を習わせることについて考えてみたいと思います。
ことばの学習はお母さんのお腹の中から始まっている
赤ちゃんとお母さんと初めて関わりを持つのはもちろんお腹の中。赤ちゃんが胎内にいるとき、お母さんの声は身体の振動として胎児に伝わるため、外の音に比べて知覚しやすいと考えられているそうです。実際に、新生児が母親の声と知らない女性の声を聞き分け、母親の声を選択的に聞こうとすること、母語や母親が妊娠中に読み聞かせた文章に対して選択的に注意を向けることが報告されているようで、母親が妊娠中に高頻度で聞いた単語を乳児が胎内で学習しているという神経学的な証拠も得られているそうなんです。
お腹をさすりながら愛情たっぷり声をかけているお母さんの言葉が、ちゃんと赤ちゃんにも伝わっているんだと思うと、なんだかほっこりしますね。
思考の道具としての言葉
胎内にいるときから言語の獲得が始まるのなら、日本語も英語もとにかく早い時期から触れさせておくと自然と英語も習得できるようになるんじゃないかと思いますよね。ですが、実際には「早いから良い」とは言えないようです。。。
ここで言葉の役割について考えてみましょう。
言葉ってきくと、ほとんどの場合コミュニケーションのための道具としての役割しか思い浮かばないですよね。でも実際は、コミュニケーションの道具としての機能の他に、思考の道具としての役割があります。
コミュニケーションの道具としての側面を「外言」、思考の道具としての側面を「内言」と呼ぶそうで、この「内言」の発達に悪影響があるのではなないかと言われているのが、早い時期からの英語(第二言語)学習なのです。
早期の英語学習が思考力の発達に悪影響?!
幼稚園・保育園くらいの年代では内言によって自分の思考や行動をコントロールすることはできず、青年期くらいになってやっと内言による思考によって計画を立てたり複雑なことも論理的に解釈することができるようになり、自分自身の行動を上手にコントロールすることが可能になるそうです。
英語を早期から学ぶと、第一言語である日本語の獲得も不完全なまま育ってしまい、「内言」としての言語の獲得が遅れ、論理的に思考したり自分をコントロールする力の発達が遅れてしまうことが懸念されているようです。
言葉にそんな重要な役割があったなんて、意識してみないとわかりませんよね。そのほかにも自我の発達にも影響があると言われているそうなので、子どもの思考力だけでなく精神面の発達も心配になってしまいますね・・・。
バイリンガルじゃなくて、セミリンガル?
中途半端に2つの言語を習得してしまって、2つの言語のどちらでも日常会話など外言としての機能は果たせるものの、論理的な思考をしたり抽象的な概念を理解することが難しくなってしまう状態のことを、セミリンガルと呼ぶそうです。
母国語の獲得が不十分な状態で他言語圏に移住した子どもは、新しい言語の発音はすぐに習得できても、論理的思考力や問題解決能力がなかなか身につかなかった例が複数報告されているそうで、こうした研究をもとにして子どもの第二言語の能力は第一言語の能力によって決まるという理論を主張する研究者もいるようです。
もちろんセミリンガルという中途半端な状態ではなく、ちゃんとバイリンガルとして育った成功例があるのも事実。
英語圏で生活している親子の例で、学校などの外の場面では英語を、家に帰ってくると英語での会話は一際せず、日本語のみでコミュニケーションをとっていた例では両言語ともうまく獲得でき、中途半端に家でも英語でコミュニケーションをとったり、英語圏で育っていない親が不完全な英語を使って子どもと話をしていた例はうまくいかなかったとの報告があるようです。
本物の英語を使って、メリハリをつけて2つの言語を学ぶことが大事ということなんでしょうか。複数言語の獲得についての研究がもっと進んで、子どもの英語学習の方法に迷わなくていい時代になるといいですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 子どもの将来のことを考えて英語を身につけさせたいと思うのは、どんどんグローバル化が進む現代なら当然のことでしょう。ですが一生懸命学習させようとしてデメリットのほうが大きくなってしまうのは避けたいですね。本物の英語が身近にない環境なら、あまり早い時期からの英語教育に真剣になりすぎず、あくまで英語に慣れ親しんでもらうというくらいのスタンスがちょうどいいのかもしれませんね。